古民家探求〜永く愛されて初めて分かる木の良さを求めて・・・
 山共製材有限会社の田口専務が古民家を訪ねて、そこに住む人たちと対談します。

    
 古民家風な住宅や店舗が静かなブームになっている昨今ですが、東白川村には今も「古民家」そのものが幾つも残っております。 そんなお宅に伺い、住んでいる方々にそんな家での暮らしや付き合い方、思いをお聞きすることで、木造建築に新しい発見があるかもしれません。 そんな思いからこの企画を始めました。
 

 

岐阜県東白川村 大明神地区

 東白川の中心地から加子母方面に向かう途中、国道を外れて谷沿いの単車線を登っていくと大明神地区が見えてくる。 今ものどかで子供達が田んぼや道ばたで遊んでいることに何の不安も感じないこの地区が私は大好きだ。

  
 
 

              
桂川憲生さん(46) 
気さくに話していただけました。

 今回お邪魔するのはこの地区に住む桂川憲生さんのお宅。


 一番古い母屋と少し離れてある隠居、その二つの建物をつなぐ2階建ての新しい建物。 昔からの家の雰囲気を生かしながら現代生活に合った家作りがなされている。 家に到着すると玄関横の窓から腰掛けて私を待っている様子の憲生さんの姿が見えた。


 その位置関係に少し違和感を覚えながら玄関を入ると、なるほど、8畳ほどの土間の右手の床から張り出すようにテーブルが据え付けられている。


〜趣のある和風旅館に来たような感覚だ。
〜心地良い風と風鈴の音だけが聞こえる。


 おばさんが運んできてくれた冷えたハーブティ。仰々しい飾り付けがあるわけではないが、とても贅沢なひとときを感じつつお話を伺った。


  
 
 

桂川憲生さんのお宅の全景です。

この右手にも建物がありましたがカメラに収まりきらなかったほど間口は広いです。

 

  
 
 


【入口】東白川の古い家によく見られる造りです。上には中二階の窓格子が見られます。(今は使っていないそうです)

---この家はどれくらい前に建てられたのですか?

憲生さん(以下N): ここはねぇ80年くらい。もともとはこの家より1間大きかったらしいんやけど、作って10年くらいで火事で燃えたの、80年位前に。それでこの家を作ったの。

---改築されたのは?

N: もう6年くらいになるかな。

---それまでは建てた当時のままだったんですか?

N: いや、台所とかはなぶっとったよ。でも,大々的に構うのはやめようと。じゃないといつか改築したい時に中途半端でできんようになるで。改築する時に壊すかって話もあったけど、親戚のおばさん達がここに来た時に懐かしいものがなくなってまうやん。それに出居、奥出居をまたお金をかけて造るのはナンセンスやと思ったわけよ。サラリーマンの給料じゃ知れてるし、造りは大きいから直した方がいいだろうということで直したんやけど、結局は金かかったね。

---一回壊してしまうともう復元できないモノですからね。そういう意味では同じお金をかけるならより意味があると思うのですが。

N: それとね、こんな余裕のあるものは作れん。玄関入ってこんなところにテーブルも作れんし。

---そうですね、新築でこんな設計はないですもんね。

N: ないない、無駄すぎる(笑)。こんな道楽はない。
 

  
 
 

【出居・奥出居】
もともとは来客接待用の部屋で、二間をつなげれば広い一つの部屋として使えることから冠婚葬祭などもこの部屋で行われることが多いです。

【リビング】
昔からの梁、柱、そして建具が時を経て素晴らしい味を出しています。
家族が一番安らげる場所です。

---改築する時に設計士さんを頼んだということですが?

N: うん。というのも素人なりに僕にもこうしたいっていう設計思想があったわけだけど、大工さんは当然手間や効率も追求しなければいけない。これは仕方がないことやと思う。だからその中間に立ってくれてこちらの要望と専門的な技術や効率のバランスをとるためには設計士さんが必要やと思ったわけ。

---これは入れたかったとか、こだわった部分とかってありますか?

N: 味のあるようにやってくれって頼んだよ。古いものは古くていいし、残せるところは全部残してって頼んで。だから大工さんはだいぶやりにくかったと本当に思う。でも床は全部張り替えたし、床下の束も全部入れ直したね。
 
【玄関】
広々とした土間が来訪者を迎えてくれます。
 

 
 

【薪ストーブ】
遠赤外線で冬でもぬくぬく。
スローライフには欠かせません。

 

---古い家でのメリットってありますか?

N: 壁紙のところと漆喰のところがあるけど、漆喰のところは露噴かんね。ストーブ焚いとるところもこの辺も窓ガラスが結露することはない。

---壁紙でやっているところもあるんですか?

N: この真ん中の新しい建物はね。安いもん。建築費を下げようと思うと、やっぱり壁紙とか使わないとね。

---現実的な問題も当然ありますからね。でも家というは人生のある意味一番大きな作品でもあると思いますし、そこには憲生さんなりの哲学も入ってくると思うのですがいかがですか?

N: 採掘燃料を使わない暮らしというのをドンドンやっていく、というのはやっぱり必要やと思うんやわ。で、家を建てるにしてもなるべく採掘燃料を使わない事をやっておくといいと思う。 例えば壊してまた次に建てる時、土壁は土壁で使えるし、古材は古材で使えるかもしれんし。

---土壁ってリサイクルできるんですか?

N: もちろん!そのまま使える。崩してまた煉るだけ。

---へぇ、知りませんでした。
【土蔵】
裏から家とそこに住む人達を見守り続けてきました。

  
 
 

 

 

N: 結局、木と石と紙で日本の住宅はできとったんやけど、木と石は全部リサイクルできるもんで、そうやって何百年と家を作ってきた歴史がある。だからなるべくそういう暮らしをしたほうがいいと思っとったんや。例えば昔は寒くてもよかったんやけど今は温かくないとあかんもんで、どうしようかなと思った時に薪ストーブ。

 薪はいくらでもあるしね。最初は憧れでいいんやけど、結果的に石油を買わんからね。停電になってもお湯も沸くし、部屋も温かいし、やろうと思えば調理もできる。そういう昔のこの村の住環境に近づけておいた方がいいんじゃないかっていう。家作りもそうで、鉄筋だったら釘ひとつ打てんし、壊したら壊したで燃やすこともできんし。だからこの村には木造が合っとるんやないかって思うんやね。



【お気に入りの場所】
玄関を入って右手にあるテーブル。
半分は土間に張り出している。
簡単な用事の来訪者でも靴を脱ぐことなく、少し座って話をしていけるところに憲生さんの心遣いが見れる。

 
(平成18年6月取材)
 

 

 

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